遺言執行者
遺言書として、遺言者の意思を残したとしても、相続人の利害関係が背反・対立し、スムーズに相続の
手続きが進まない場合があります。
例えば、不動産の登記変更手続きや預貯金の出金・解約等のお手続きをする場合でも、遺言執行者を
定めていない場合には、原則として相続人全員でのお手続きが必要となります。
この場合、一人でも遺言書の内容に納得がいかない者がいた場合、手続き自体が難航し、結果として、
遺言者の意思が果たせなくなるといったケースに留意する必要があります。
上記のようなケースを回避し、遺言を適正、確実に実現させるためには、「遺言執行者」を指定しておく
ことをお勧めいたします。
遺言執行者は、法律によって他の相続人らの同意を得ることなく、相続財産の管理、不動産の
所有権移転等の登記手続き、預貯金・有価証券等の解約・払戻し・名義変更並びに貸金庫の
開扉・解約手続を行う権限など、遺言の執行に必要な一切の権限が与えられるとともに、その
義務を負うことになります。
なお、「認知」と「相続人の廃除」、「相続人の廃除の取消し」の執行は、遺言執行者しか行うことが
できませんので注意が必要です。
また、遺言執行者の権限は、遺言書によって指定することや、制限を加えることもできます。
遺言執行者には法律の知識や経験が求められますので、信頼できる弁護士や行政書士、司法書士
などがいらっしゃればその方に依頼しておくと安心です。
※遺言執行者には、相続人を指定することも可能です。
元山法務事務所にご依頼の客様の多くの方は、幣事務所の代表者である元山陽平を
遺言執行者として選任する内容の遺言書をのこしておられますが、まずは、身近で信頼
できる人物を指定されることをお勧めしております。
以下では、遺言執行者にかんする条文を掲載しておりますので、ご参考までに一度ご覧ください。
<遺言執行者に関する民法の条文>
(遺言執行者の指定)
第1006条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。
(遺言執行者の任務の開始)
第1007条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
(遺言執行者に対する就職の催告)
第1008条 相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、遺言執行者が、その期間内に相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。
(遺言執行者の欠格事由)
第1009条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。
(遺言執行者の選任)
第1010条 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
(相続財産の目録の作成)
第1011条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
2 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。
(遺言執行者の権利義務)
第1012条 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第1013条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
(特定財産に関する遺言の執行)
第1014条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
(遺言執行者の地位)
第1015条 遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。
(遺言執行者の復任権)
第1016条 遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2 遺言執行者が前項ただし書の規定により第三者にその任務を行わせる場合には、相続人に対して、第百五条に規定する責任を負う。
(遺言執行者が数人ある場合の任務の執行)
第1017条 遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
(遺言執行者の報酬)
第1018条 家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
2 第六百四十八条第二項及び第三項の規定は、遺言執行者が報酬を受けるべき場合について準用する。
(遺言執行者の解任及び辞任)
第1019条 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。
2 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
(委任の規定の準用)
第1020条 第六百五十四条及び第六百五十五条の規定は、遺言執行者の任務が終了した場合について準用する。
(遺言の執行に関する費用の負担)
第1021条 遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。ただし、これによって遺留分を減ずることができない。