遺留分

遺留分とは?
遺留分(いりゅうぶん)とは、相続人に留保された、相続財産の一定の割合のことをいいます。

遺言者は、原則として遺言によってその相続財産を自由に処分することが認められていますが、
その自由を無制限に認めてしまうと、本来の相続人の期待をあまりにも無視する結果となってしまい
妥当ではありません。 

そこで法は、遺留分を定め、その範囲で遺言の自由を制限しているわけです。
ただし、遺留分を害するような遺言(例えば、遺留分を有する相続人がいるにもかかわらず、
第三者に相続財産を全部遺贈するといった遺言など)でも、ただちに許されないわけではなく、
遺留分を有する者が遺留分減殺請求をしてきたときに、その限度で遺贈が効力をもたなくなるにすぎません。

よって、遺留分を害するような遺言をしたからといって、そのこと自体には何ら問題はありません。

なお、遺留分減殺請求権も、その行使が権利の濫用と認められる場合などには、
行使が制限されることもあります(裁判例:仙台高秋田支部判昭36.9.25)。

 

1.遺留分減殺請求権の消滅

 さて、遺留分を侵害された相続人は、その侵害された限度で贈与または遺贈の効力を失わせることができます(遺留分減殺請求=「いりゅうぶんげんさいせいきゅう」といいます)。
 ただし、この遺留分減殺請求権は、相続開始及び贈与・遺贈があったことと、それが遺留分を侵害し、遺留分減殺請求をしうることを知ったときから1年以内に行使しなければ時効で消滅してしまいます。
 またこれらの事実を知らなくとも、相続の開始から単に10年が経過した場合も同様に権利行使できなくなります。 この10年の経過は、除斥期間と解されているので、時効の中断なども問題になりません。

 

2.遺留分の割合

 遺留分を有するのは、兄弟姉妹を除く法定相続人、つまり配偶者・子・直系尊属に限られます。 ただし、相続の欠格・廃除・放棄によって相続する権利を失った者は、遺留分を主張することもできません。 なおこの場合でも、代襲相続が可能な場合(相続放棄を除く)、代襲者が遺留分を主張することができます。

 遺留分の割合は以下の通りです。
1.直系尊属のみが相続人である場合 は 遺産の3分の1
2.その他の場合 は 遺産の2分の1

 例えば、被相続人に、配偶者と子供1人が共同相続人としている場合、配偶者は法定相続分として2分の1を相続できるはずです。 ここで、被相続人が子供に全財産を遺贈する旨の遺言を残していた場合、そのような遺言も有効ですので、配偶者の相続分はゼロとなってしまいます。 しかし、遺留分の制度により、配偶者は自分の法定相続分の半分(上記の表の2に該当します)の4分の1を遺留分として請求できるのです。

 

3.遺留分算定の基礎となる財産

 遺留分算定の基礎となる財産の範囲は、民法1029条によって次のように定められています。

「遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して、これを算定する」

つまり次の計算式になります。

「被相続人が相続開始時に有していた財産」
+「贈与財産」
-「被相続人の債務」
=「遺留分算定の基礎となる財産」

 減殺の順序と割合は、次のように法律で決まられています。
 第1 遺贈、死因贈与
 第2 贈与

 遺贈、死因贈与が複数ある場合は、その目的の価額の割合に応じて減殺します。 遺贈や死因贈与を減殺しても足りないときは、贈与が対象となります。 新しい贈与から順に対象となり、順次古い贈与に及びます。 なお、減殺請求の対象となる贈与は、相続開始前の1年間にされたものに限られます。 ただし、贈与の当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したときは、相続開始の1年以上前にされた贈与でも減殺請求の対象になります。 ここで注意するのは、贈与が共同相続人に対して行われた場合、いわゆる特別受益にあたる場合ですが、この場合は、第三者に対してなされた贈与の場合とは異なり、相続開始の1年以上前になされたものでも、遺留分算定の基礎財産に含まれます。

 

4.減殺請求の方法

 減殺請求は、必ずしも裁判所へ訴えてする必要はありません。 意思表示が相手方に到達すれば足ります。 裁判外で請求する場合は証拠を残すために、配達証明付きの内容証明郵便で請求する方法が一般的です。

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