相続財産のなかに賃借物件があるとき。

ー ポイント -

1、賃貸人に対して、賃借人が変更した旨の通知をいたします。

2、賃貸借契約を継続しない場合には、賃貸人に対して、賃貸借契約終了の申入れをします。

 

賃借人が変更した旨の通知

ー 賃借人の地位の相続 -

 賃貸借契約に基づく借地権および借家権は、財産権として、その相続人に相続されます。(民896)

相続人が借地上の建物、借家に居住しているか否かは関係ありません。

この相続については、賃貸人の承諾は不要です。したがって、賃貸借契約の名義人が死亡しても、
相続人は出て行く必要はありません。

複数の相続人がいる場合には、いったんは、共同相続人が各相続分に応じて準共有することになり
ますが、(民898)遺産分割の協議、調停または、審判により(民907)借地権、借家権の最終的な
取得者が定められると、以後はその取得者だけが相続開始の時に遡って賃貸人と賃貸借関係に立つ
ことになります。(民909)

 

ー 賃借人変更通知書 -

賃借人の地位が相続によって相続人に承継しても、その旨の連絡をしないと賃貸人には分かりません。

また、賃貸人にとっては、賃借人によって賃料の支払能力、賃貸物件の使用収益の態様等に差異が
生じることから、誰が賃借人であるかについては高い関心を有することが一般です。

そこで、新賃借人が誰であるかを記した賃借人変更通知書を賃貸人に送付する必要があります。

なお、その際に併せて、新賃借人の名義の賃貸借契約に書き換えることがのぞまれます。ただし、
書換えをしなくても、法的には、当然に賃貸人と新賃借人との間で、従来の契約関係が続いている
ことになります。

 

ー 賃貸借契約の終了 -

賃貸借契約には賃貸借期間が定められており、この期間の途中では、原則として賃貸借契約を終了
させることはできません。

ただし、一定の期間をおけば契約解約の申入れをすることができる旨が、賃貸借契約で定められて
いることが一般です。

よって、賃借人の相続人は、賃貸借契約の定めに従って、一方的に賃貸借契約を解約することが可能
です。

賃借人の相続人が複数ある場合には、解除権不可分の原則(民544)との関係で、相続人全員が
賃貸人に対して解約の意思表示をする必要があります。

 

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