遺言執行者の指定がないとき

ー ポイント -

遺言所に遺言執行者の指定ないし、その指定を第三者に委託されていない場合には、家庭裁判所
に対して利害関係人は、遺言執行者の選任を求めることができます。

 

 

遺言執行者の選任 

指定の遺言執行者がないとき、またはなくなったとき、つまり委任を辞退したとき(民1006①)、未
成年者や破産者であるとき(民1009)、解任・辞任(民1019)したときは、家庭裁判所は利害関係
人の請求によって、遺言執行者を選任することができます。(民1010)

 

ー 特定遺贈の場合 -

遺贈による不動産の取得登記は、判決による場合を除き、登記権利者である受遺者と登記義務者
である相続人または、遺言執行者との共同申請によることになります。

したがって、法定相続人に対して登記手続請求をする方法もとれますが、遺言執行者による執行も
可能ですから、その選任が認められています。

 

ー 包括遺贈の場合 -

執行を要せずその内容を実現できるので、遺言執行者選任の必要がないとする学説もありますが、
登記実務上は、特定遺贈の場合と同様、受遺者と相続人または、遺言執行者との共同申請により
登記することとされています。

この立場から、包括遺贈がなされたが、相続人も遺言執行者もない場合には、登記手続きのため
遺言執行者を選任する必要があるという決定があります。(高判S44.9.8)

なお、この決定は、「登記義務者となるべき相続人がいないのであるから、遺言執行者を選任して
上記登記手続を完遂する必要がある」 と述べていますが、事例に則した判断をしているもので、特
定遺贈の場合と同様、相続人がいる場合を排除する必要はないと考えられます。

 

ー 「相続させる。」という遺言の場合 ー

この場合、何らの行為を要せずして、当該遺産は被相続人の死亡のときに直ちに相続により承継
されるとされているため、当該相続人が単独で相続登記を申請できることから、登記実務では、遺
言執行者には相続登記を申請する代理権はないとされています。

このため、、相続させる遺言の場合には、通常は遺言執行者の選任は不要です。

もっとも、この場合でも、遺言の内容を具体的に実現するための執行行為が当然に不要となるという
ものではなく、当該不動産が被相続人名義である限りは、遺言執行者の職務は顕在化しないが、
他の相続人が移転登記しているようなときは、抹消登記手続きのほか当該相続人への真正な登記
名義の回復による移転登記手続を求めることができるとされているので、その場合は遺言執行者の
選任が認められると考えられます。

 

ー 申立に基づく審理手続きと効力 -

1、遺言には、遺言の内容を実現するために、遺言執行者を要するものと要しないものがあります。
遺言者の意思を実現するための執行は、遺言者の意思を適正に実現することが要求される反面、
相続人の利益と相反することにもなるので、その執行に当たる人物は厳選されなければなりません。

2、家庭裁判所は、候補者の意見を聴かなければなりません。 

3、相続人は、相続人の資格とまったく相容れない内容の執行の場合を除いて、執行者となること
ができます。 

4、未成年者および破産者は、遺言執行者となることができません。

 

遺言執行者の任務 

財産目録の作成(民1011)

遺言執行者の権利義務(民1012)

遺言による推定相続人の廃除(民893)

推定相続人排除の取消し(民894)

遺言による認知(戸64)

排除または排除の取消し(戸97)

 

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