相続排除
ポイント
1、相続権を剥奪するためには、被相続人が家庭裁判所に推定相続人排除の調停または、審判の
申立てをします。
2、調停が成立した場合には、推定相続人を廃除することを記載した調停条項(案)を作成します。
3、推定相続人排除の申立て後、調停(排除の遺言があるとき)が成立または、審判が確定する前
に相続が開始した場合、相続財産をめぐる混乱を防止するため、家庭裁判所は、遺産管理人の選任
その他の遺産の管理に関する処分を命ずることができます。
4、推定相続人排除の調停成立または、審判が確定し、相続人が自ら財産を管理することができる
ようになったとき、家庭裁判所は、申立てにより、遺産管理人選任処分を取り消さなければなりません。
5、推定相続人排除の調停が成立したとき、または、審判が確定したときは、被排除者である相続人
は、直ちに相続権を失います。 排除の届出によって効力が発生するものではありません。
申立人は、調停成立または、審判確定の日から10日以内に、その旨の戸籍の届出をしなければ
なりません。
手続き
ー 推定相続人の廃除 -
推定相続人が被相続人を虐待したり、これに重大な侮辱を加えたとき、または、相続人のをの他
著しい非行があったとき、被相続人は、家庭裁判所に推定相続人排除の申立てをし、調停または、
審判によって、相続人の相続権を剥奪することができます。(民892)
ー 推定相続人の廃除理由 -
1、被相続人に対して虐待をしたとき、もしくは重大な侮辱を加えたとき(民892)
虐待とは、被相続人の身体または精神に不当な苦痛を加えること、重大な侮辱とは、被相続人の
人格的価値ないし名誉感情を著しく害することであり、その結果、被相続人がその者との間に、相
続的共同関係を継続することが一般に期待できないと認められる場合をいいます。
2、推定相続人にその他の著しい非行があったとき(民892)
その他の著しい非行とは、相続的共同関係を破壊するような重大な非行をいいます。
ー 推定相続人排除の調停ないし審判の申立て -
推定相続人を廃除するためには家庭裁判所へ調停ないしは審判の申立てをします。
調停の申立てがあった場合、調停委員会は当事者の主張を聴くとともに、職権で必要な事実調査
および証拠調べなどをおこないます。 ただし、実際は、紛争性が強いことから、申立人が積極的に
排除に必要な事実関係を提出しないと、実質的な手続は進まないのが現状です。
その結果、当事者間に推定相続人排除の合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立
したものとし、その記載は確定した審判と同一の効力を有します。
調停委員会は、当事者に合意が成立する見込みがない場合または、成立した合意が相当でないと
認める場合、調停が成立したかったものとして、事件が終了させることができます。
調停が成立しない場合には、調停申立時に審判の申立てがあったとみなされます。
したがって、事件は当然審判手続きに行こうします。 審判においても調停と同様、申立人が積極的
に排除に必要な事実関係を提出しないと、実質的な手続じゃ進まないのが現状です。
ー 調停成立または、審判の確定の効力 -
排除の調停が成立し、または審判が確定すると、被排除者である相続人は、直ちに相続権を失い
ます。
排除の届出によって調停成立または審判の確定の効力が生じるわけではありません。
排除の効力は当該被相続人の相続についてのみ及びますので、その者の子は被排除者を代襲
して相続となることができます。(民887②)
一方、相続欠格事由がある者は受遺者となることができません。(民956) 排除者は同上の準用
がないことから受遺者となることができます。
推定相続人排除によって、被排除者は、相続権を剥奪されるだけで、扶養、その他の身分的法律
関係には影響ありません。