自筆証書遺言
自筆証書遺言は、他の遺言書形式のなかでも、最も簡易な要件の基での作成となります。
この遺言書の最大の特徴は、費用がかからず作成も簡易で、しかも、いつでも好きなときに、
誰にも内緒で、自分ひとりの行為だけで作成することができるということです。
自筆証書遺言は大変便利な遺言方法の一つですが、作成が簡易である反面、気をつけ
なければいけないことがたくさんあります。
また、自分ひとりで作成しようとする場合にありがちなのが、法定された形式を間違えて作成している
にもかかわらず、その間違いに気付かず、無効な遺言書を完成させていまうことが最も多いケース
かと思われます。
第一に、この自筆証書遺言を法的に効力のある遺言とする為には、民法に規定されている
一定の要件を満たす必要があります。
遺言を残す最大の理由が、後々の紛争を防ぐことにあるのですから、不完全な自筆証書遺言を作成し、
逆に、相続人間の紛争を招いてしまうようなことは避けるべきです。
以下は、自筆証書遺言作成時の注意点です。
〔遺言書の全文が遺言者自信の自筆であること〕
※代筆、タイプライターによる遺言は無効
この要件が自筆証書遺言を作成するにあたり、最も困難要件の1つです。
遺言書を残そうとお考えの方の多くがお年寄りであり、細かな文字を書く
のを苦手とされる方も多く、また、下記間違いの訂正にも要件が定められて
いるため、作成の途中で断念する方も多いようです。
〔作成日付を正確に記すこと〕
※年月日の記載のない遺言は無効。
「○年○月の吉日」などといった記載も日付を特定することができない為に無効。
「○年遺言者の誕生日」は有効といったように様々な判例等がございますが、
やはり、正確な日付を記しておくことがよいでしょう。
〔遺言者が署名、押印すること〕
※後、戸籍どおり姓名を自署。
※押印は、三文判でも構いませんが後日、相続人間でトラブルが起きてしまわないようにトラブル防止の
観点からも実印を押印するケースがおおいようです。
〔遺言書が2枚以上になったとき〕
内容によっては、一通の遺言書の枚数が1枚では足りなくなく場合もございます。
そのようなときは、ホチキスなどで綴り、署名押印した同じ印鑑で契印(割印)しましょう。
〔遺言の内容は、はっきりと正確に書きましょう〕
※財産を特定する際には、不動産は登記簿謄本を取得し、その記載どおりに記載する。
※預金の場合も支店名及び口座番号、金額などを正確に記載する。
※証券等は証券番号や口数を記載しましょう。
また、誰が見ても同じ内容になるように、できるだけ法律用語を使用するほうがよいでしょう。
〔共同遺言は避ける〕
※民法には、遺言は「2人以上の者が同一の証書でこれをすることができない」と規定されています。
夫婦であっても共同名義の遺言を作成することはできません。
※判例には様々なケースがあり、認められたケースもございますが、やはり、共同遺言は避けましょう。
[参考法令]
民法968条(自筆証書遺言)
(1)自筆証書によつて遺言をするには、遺言者が、その全文、日附及び氏名を自書し、これに印をおさなければならない。
(2)自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を附記して特にこれに署名し、
つ、その変更の場所に印をおさなければ、その効力がない。
遺言書、保管サービス
元山法務事務所では、無料にて遺言書を当事務所の金庫にて厳重に保管するサービスを
行っております。
自筆証書遺言の場合、前述のポイントを押さえた上できちんとした遺言書を作成したとしても、
誰にも発見されなければ意味がありません。
自筆証書遺言で非常に悩ましいのは、「どこに保管するか」なのです。
ですが、すぐに見つかるような場所に保管していては、変造、隠ぺい、破棄される恐れがありますし、
かといって、誰にも見つけられないような場所にしまい込み、 肝心なときに誰にも見てもらえないのも考えようです。
適切な自筆証書遺言の保管方法として、一つ考えられるのは、
「普段は家族の目は届かないが、遺品整理の際には必ずチェックされるような場所」
に保管することです。
たとえば、書斎の棚や机にある鍵付きの引き出し、金庫などが考えられます。
また、もう一つの方法としては、絶対の信頼がおける知人、友人に預けたり、また、誰にも見られないような
日記を付けている人であれば、 その日記に保管場所を記しておいて、後に親族にその日記から見つけて
もらうなどの方法も考えられます。