遺言書
死亡時の財産の処分方法などを定めた書面を遺言書といいます。
遺言書を作成することは、必ずしも義務ではありませんが、えてして「相続=争族」といわれるように、遺産をめぐる争いは多いものですから、事前に紛争を予防するため、遺言書を作成することは、とても効果的です。
遺言公正証書(公正証書遺言)とは、遺言者が公証人に対し、遺言内容を口頭で伝え(口授といいます)、公証人が聞いた内容を基に作成する遺書書のことをいいます。
遺言公正証書(公正証書遺言)を作成するメリット
1 | 家庭裁判所の検認が不要 |
公正証書以外の遺言では、必ず家庭裁判所の検認を受けなければなりませんが、遺言公正証書(公正証書遺言)の場合には、検認が不要とされており、相続手続きがスムーズに進められます。 | |
2 | 信頼性 |
遺言公正証書(公正証書遺言)は、証人2名立ち会いのもと、公証人によって作成されますから、改ざんや変造の心配がなく、内容が真正なものであるという推定が働きますから、あとで無効だとされる危険もほとんどありません。 また、自筆証書遺言のように、様式の不備などが生じる心配もありませんから安心です。 |
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3 | 安全性 |
公正証書の原本は公証役場に20年間ないし本人が100歳に達するまで、いずれか長い方の期間保管されますから、紛失の心配がありません。 また、日本公証人連合会の遺言検索システムにより、遺言書の存在の有無を調べることが出来ます。 |
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4 | 字が書けなくても作成可能 |
遺言公正証書(公正証書遺言)の場合であれば、病気やけがで自書することが不可能な方でも、作成することが可能です。 また、希望に応じて、公証人が自宅や病室へ出張して作成することも出来ます。 |
遺言公正証書(公正証書遺言)に定める内容
● | 財産の処分に関する事項 | |
◆ | 相続分の指定または指定の委託 | |
法定相続分とは異なる相続分を指定することが出来ます。 または、この相続分の指定を第三者に委託することが出来ます。 |
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◆ | 遺贈、および遺贈の減殺の順序・割合の定め | |
遺言によって法定相続人以外の者へ贈与(遺贈と言います)をすることが出来ます。 また、遺留分減殺となる順序や割合についても定めることが出来ます。 |
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◆ | 遺産分割方法の指定または指定の委託、もしくは遺産分割の禁止 | |
遺言によって、財産をどのように分けるか、具体的な遺産分割の方法を指定することが出来ますし、この分割方法の指定を第三者に委託することも出来ます。 また、相続開始から最長5年以内であれば、財産の分割を禁止することも出来ます。 |
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◆ | 推定相続人の廃除、または排除の取消し | |
相続させたくない者がいる場合、遺言で具体的な理由を記して排除することが出来ます。 ただし、排除の請求は、遺言執行者によって行う必要があります。 または、遺言で排除を取消すことも出来ます。 |
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◆ | 特別受益の持ち戻しの免除 | |
相続の際に、特定の相続人が受けた特別受益が相続分から控除されない(持戻されない)ようにする事が出来ます。 | ||
◆ | 共同相続人の担保責任の減免・加重 | |
遺言によって、相続人間の担保責任を、減免ないし加重することが出来ます。 | ||
● | 身分に関する事項 | |
◆ | 認知 | |
婚姻関係にない相手との間に生まれた子、または生まれてくる予定の子を認知することが出来ます。 認知の届出は、遺言執行者によっておこなう必要があります。 |
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◆ | 未成年後見人の指定 | |
推定相続人で親権者のいない未成年者のために未成年後見人を指定することが出来ます。 さらに後見人を監督する後見監督人を指定することも出来ます。 |
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● | 遺言執行に関する事項 | |
◆ | 遺言執行者の指定または指定の委託 | |
遺言によって、遺言者の代わりに遺言内容を執行する者(遺言執行者)を指定することが出来ます。 または、指定を第三者に委託することも出来ます。 |
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◆ | 遺言執行者の復任権・遺言執行者の報酬 | |
遺言によって、遺言執行者が、やむを得ない理由でなくても、第三者に任務を行わせることを、認めることが出来ます。 |
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その他の事項 | |
◆ | 財団法人設立のための寄付行為 | |
◆ | 信託の設定 | |
◆ | 生命保険受取人の指定や変更 | |
◆ | 遺言の取消し | |
遺言公正証書(公正証書遺言)に関する注意点
● | 遺留分 |
相続財産のうち、相続人に保障された一定割合の部分(遺留分)を侵害していれば、あとで減殺請求を受ける可能性はあります。 出来れば、遺留分を侵害しない方がいいのでしょうが、事情がある場合は、減殺請求を受けることも計算した上で遺言された方がいいです。 |
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● | 秘密保持 |
公正証書遺言においては、証人2名を立てなければなりません。 相続人や受遺者及びその配偶者など利害関係のある人は証人になれません そうすると、証人2名と公証人、の最低でも3名には内容が知られます。 万が一、遺言内容が相続人に知られてしまったら、トラブルの原因になりかねません。 そのため、公正証書遺言においては、自筆証書遺言と異なり、遺言の秘密保持が重要となります。 よって、証人となる者については、法律で守秘義務が課せられている法律家である、 ・弁護士 ・司法書士 ・行政書士 などに依頼するのが一番安心です。 |
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● | 遺言執行者の定め |
遺言執行者を定めるかどうかは任意ですが、遺言執行者を定めておいた方が安心です。 遺言執行者とは、遺言にの代わりに相続の手続きを行う者のことをいいます。 相続手続きは、不動産の登記や預貯金の解約・払い戻し、など複雑で煩雑な手続きがたくさんあります。 遺言執行者が指定されている場合、相続人は財産の処分やその他の遺言執行の妨害となる行為をすることが出来なくなります。 遺言執行者は、遺言書でのみ指定することが出来ます。 なお、認知や相続の排除・取消しにおいては、必ず遺言執行者が必要です。 遺言執行者が選任されていない場合、相続人の誰かが代表者となって手続きを進めることになりますが、煩雑な手続きの負担を強いることになり、また、他の相続人からごまかされているような疑念を受ける可能性もあります。 弁護士や行政書士などの専門家に就任してもらうのがいいと思います。 |
遺言公正証書(公正証書遺言)の作成に関する必要書類
遺言公正証書(公正証書遺言)の作成において必要となる書類は、以下のとおりです。
・遺言者の印鑑証明書
・遺言者の戸籍謄本や受遺者の住民票
・不動産登記簿謄本と固定資産税評価証明書(不動産がある場合)
・預貯金の通帳または残高証明書
・生命保険の解約返戻金証明書