離婚における公正証書
離婚に関して発生する、慰謝料や財産分与、養育費、親権、などの内容を定めた公正証書のことを、「離婚給付契約公正証書」といいます。
離婚そのものは、双方合意の上で離婚届を提出さえすれば成立となります。
その際、証人2名が必要ですが、成人している方なら誰でもなることが出来ます。
子供がいる場合には、親権者の定めさえ記載されていればよく、それ以上の内容を記載する必要もありません。
しかし、通常、離婚に際しては、財産的給付を伴うことが大半でありますから、その金額や支払方法などを定め、確実なものにするためには、公正証書を作成することがもっとも効果的です。
離婚給付契約公正証書を作成するメリット
1 | 安全性 |
公正証書の原本は公証役場に20年間保管されるため、万が一正本や謄本を紛失しても、再交付してもらうことが出来ます。 | |
2 | 安心の確保 |
公正証書には、慰謝料や財産分与、養育費や面接交渉権、などについて履行の内容や方法の詳細が明記されますから、履行の明確な手引きとなりますし、万が一の不履行時にも強制執行が可能ですので、一定の安心を確保出来ます。 |
離婚給付契約公正証書に定める内容
● | 慰謝料 |
離婚における慰謝料とは、離婚に至る原因となる行為および離婚自体について、離婚の原因を作った側が相手方に対して支払う損害賠償金のことです。 そのため、特に理由がなく双方が合意して離婚をした場合には「慰謝料」は発生しません。 |
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● | 財産分与 |
離婚の財産分与とは、婚姻中に夫婦で築きあげた財産の清算・分配のことです。 離婚をした者の一方は、相手方に対して財産分与を請求することが出来ます(民法第768条)。 |
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● | 養育費 |
養育費とは、子供を養育するために必要な費用のことであり、衣食住に関する費用や教育費、および適度な娯楽費などが含まれます。 親には、未成年の子供を養育(扶養)する義務があります。 この養育義務(養育費の支払義務)は、親権や監護権の有無とは関係がありません。 |
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● | 親権者/監護者 |
親権とは、父母が未成年の子供に対してもっている、身分上・財産上の保護・監督・教育・管理を内容とする包括的な権利及び義務の総称です。 親権を、便宜上、財産管理権と身上監護権に分け、前者を「親権」、後者を「監護権」とする場合があります。 |
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● | 面接交渉権 |
面接交渉権とは、監護・教育しない側の親が、その子と親子の面会交流する権利のことをいいます。 定期的に直接会って接触することや、誕生日やクリスマス、入学、運動会をはじめ、その他、宿泊・旅行その他のイベントなどは、子の健全な養育のためにも必要なものです。 |
離婚給付契約公正証書に関する注意点
● | 科目の内訳 |
慰謝料、財産分与、養育費、はそれぞれ科目を分けて算定することをお勧めします。 特に、養育費と慰謝料・財産分与は、別個の法律行為であり、時効の有無や強制執行しうる範囲なども異なります。 養育費には、時効はありません。 また、養育費には、不履行時の強制執行につき、特例があり、給与所得等の定期収入の2分の1まで差し押さえることが出来ます。財産分与については、預貯金と現金、など、同等額で相殺をすることが出来ます。 しかし、慰謝料は、財産分与とは異なり、相手から一方的に相殺をされることのない債権です。 あとあとで面倒にならないよう、慰謝料・財産分与・養育費については、出来る限り、個別に金額を明示しておく方が安心です。 |
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● | 金銭以外の現物給付 |
不動産など、金銭以外の現物での給付については、所有権移転登記手続きの履行期限などを明確に定めておくことが大切です。 そうしないと、期限の定めがない債務となり、万が一不履行となった場合など、手続きが面倒になります。 また、登録免許税などの費用負担を誰がするか、なども明確に定めておくことが大切です。 |
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● | 財産分与の範囲 |
財産分与によって取得した財産には、原則として贈与税はかかりません。 しかしながら、社会通念上の許容範囲を大きく超えるような財産分与が為された場合には、贈与税が課せられる場合があります。 また、不動産を取得した場合には、譲渡所得税が課せられる場合があります。 |
離婚給付契約公正証書の作成に関する必要書類
離婚給付契約公正証書の作成において必要となる書類は、以下のとおりです。
・印鑑証明書
・戸籍謄本
・不動産登記簿謄本と固定資産税評価証明書(不動産がある場合)
・預貯金の通帳または残高証明書
・生命保険の解約返戻金証明書