準消費貸借契約公正証書

準消費貸借契約とは、請負代金債務や売掛金債務など、元々消費貸借契約でなかったものを、金銭の貸借に組み直してしまおうとするものです。内容の異なる複数の債務を一元化する場合など、債務の内容が分かりやすくなり、管理もしやすくなるため、債権者・債務者双方にとっての実益があります。

 

準消費貸借契約公正証書を作成するメリット

債務の明確化
  弁済の内容を定めることにより、将来的な争いを予防することが出来ます。
損害賠償の立証が不要
  金銭債務においては、事前に不履行時の損害賠償の額を定めておくことが出来、定めた場合には、損害が発生したことを立証する必要がないとされています。
また、債務者は、不履行が不可抗力であっても、賠償義務を免れることが出来ません。(民法第419条)。
時効期間
  売掛金債務など短期消滅時効にかかる債権の場合、消費貸借に組み直すことにより、時効期間が延びるというメリットがあります。
履行の確保
  相互に弁済方法を確認する訳ですから、安定した履行の確保が見込めます。

 

準消費貸借契約公正証書に定める内容

債務の内容
  すでに原債権が存在していたことが契約の要件です。従前にどのような債権債務があったのか、具体的に記載しておく必要があります。
利息の定め
  利息の定めがある場合は、年率などの内容を記載します。
金銭債務の場合、利息制限法に定める上限を超えないように気を付ける必要があります。
   
  ※例:利息は年率15%とする。
   
弁済方法
  弁済期、弁済方法、弁済にかかる費用負担、などの定めを明記しておきます。
   
  ※例:平成●年●月●日より平成●年●月●日まで、毎月末日限り、計●●回に渡り、元本金●●万円および利息金を、以下に定める預金口座へ振込送金の方法により支払う。
   
遅延損害金の定め
  遅延損害金や違約金の定めがある場合は、利息とは別の条項にして、年率などの内容を記載します。
利息と同様、利息制限法に定める上限(利息の1.46倍)を超えないように気を付ける必要があります。
   
  ※例:遅延損害金は年率21.9%とする。
   
期限の利益の喪失
  分割弁済の場合、、どのような場合に期限の利益を喪失するか、喪失後の取扱をどのようにするか、等の内容を定めます。
   
  ※例:乙は、以下の場合には、通知催告がなくとも当然に期限の利益を失い、直ちに元利金を支払わなければならない。
   ①分割金の支払を怠ってとき
   ②乙が第三者から差押え・仮差押・仮処分、または強制執行を受けたとき
   ③乙が、破産手続開始決定または民事再生手続開始決定、もしくは競売の
    申立を受けたとき
   ④甲に通知せずに、住所を移転または勤務先を変更したとき

 

準消費貸借契約公正証書に関する注意点

強制執行認諾条項
  金銭債務の履行を定めた場合、せっかく公正証書にするのですから、強制執行認諾条項は入れておくべきです。
そうでないと、不履行となった場合、せっかく作った公正証書であっても、その最大の効力である強制執行を行うことが出来ません。
債権の特定
  債務弁済契約や準消費貸借契約においては、何時どこでどのように発生した債権で、現時点での債務はいくらなのか、ということを具体的に特定しなければなりません。
期限の利益の喪失条項
  分割弁済となる契約においては、必ず「期限の利益喪失」条項を付しておいた方が無難です。
そうでないと、支払が滞った場合、現に不履行となった分以外の残債務を請求することが出来なくなってしまいます。
利息・損害金の有無や内容の定め
  民法上、私人間での貸し借りは、原則として無利息です。
定めをおかなれば、請求することは出来ません。
また、分割弁済においては、遅延した場合の遅延損害金などもきちんと定めておかなければ、請求することは出来ません。
なお、利息・損害金については、利息制限法により、上限が定められていますので、これを超えて定めても違法となります。
違約金には、利息制限法の適用はありませんが、あまりに高額ですと公序良俗違反などになりますので、ご注意下さい。
また、売掛金の場合、消費者契約法に定める年14.6%などが適用されるケースもあります。
ご不明な場合は、ご相談下さい。

 

準消費貸借契約公正証書の作成に関する必要書類

債務弁済契約公正証書の作成において必要となる書類は、以下のとおりです。

・当事者双方の印鑑証明書
・原契約書または債権債務の存否を疎明する資料

 

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