債務弁済契約公正証書
いわゆる慰謝料の示談書や売掛金、契約不履行に基づく債務などについて、相互に債権債務を承認し、弁済方法を定める契約を債務承認弁済契約といいます。
不法行為や代金滞納、不履行、その他の事情により、一定の債権債務は相互に認めているものの、きちんとした書面を作成していない、又は改めてきちんとした書面を作成する必要がある、という場合に、相互に将来のトラブルを事前に予防し、弁済を確かなものにするために、とても有用です。
債務承認弁済契約公正証書を作成するメリット
1 | 債務の確定 |
弁済の内容を定めることにより、将来的な争いを予防することが出来ます。 | |
2 | 時効中断 |
債務の承認は、時効中断事由となりますので、新たに本書面作成で時効の進行がゼロに戻り、起算が開始となります。 | |
3 | 履行の確保 |
相互に弁済方法などを確認する訳ですから、安定した履行の確保が見込めます。 |
債務承認弁済契約公正証書に定める内容
1 | 債務の内容 |
何時どのような原因で発生したものか、などを明記し、その内容についての承認と、履行することへの合意を記載します。 | |
※例:乙は、甲に対し、平成●年●月より平成●年●月まで過去●年●ヶ月に渡り、甲の妻である●●●●と、既婚者であることを知りながら、継続的に不貞行為を行なったことを謝罪し、慰謝料として、金●●●万円の支払義務のあることを認める。 | |
2 | 履行方法 |
弁済期、弁済方法、弁済にかかる費用負担、などの定めを明記しておきます。 | |
※例:乙は、甲に対し、平成●年●月●日より平成●年●月●日まで、毎月末日限り、金●円宛●回 計金●●円を、以下に定める預金口座へ振込送金の方法により支払う。 弁済にかかる費用は、乙が負担するものとする。 |
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3 | 違約条項の定め |
遅延損害金や違約金の定めがする場合は、その内容を記載します。 | |
※例:乙は、甲に対し、以後甲の妻である●●●●とメールや電話その他の私的なコンタクト及び金銭の授受を一切行わないことを確約し、万が一違反した場合には、別途違約金として金●●●万円を支払うものとする。 | |
4 | 期限の利益の喪失 |
分割弁済の場合、、どのような場合に期限の利益を喪失するか、喪失後の取扱をどのようにするか、等の内容を定めます。 | |
※例:乙が分割金の支払いを1回分以上怠った場合には、期限の利益を喪失し、甲に対し、残元本に、完済に至るまで年率5%の割合による金員を付加して支払う。 | |
債務弁済契約公正証書に関する注意点
● | 強制執行認諾条項 |
金銭債務の履行を定めた場合、せっかく公正証書にするのですから、強制執行認諾条項は入れておくべきです。 そうでないと、不履行となった場合、せっかく作った公正証書であっても、その最大の効力である強制執行を行うことが出来ません。 |
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● | 債権の特定 |
債務弁済契約や準消費貸借契約においては、何時どこでどのように発生した債権で、現時点での債務はいくらなのか、ということを具体的に特定しなければなりません。 | |
● | 期限の利益の喪失条項 |
分割弁済となる契約においては、必ず「期限の利益喪失」条項を付しておいた方が無難です。 そうでないと、支払が滞った場合、現に不履行となった分以外の残債務を請求することが出来なくなってしまいます。 |
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● | 利息・損害金の有無や内容の定め |
民法上、私人間での貸し借りは、原則として無利息です。 定めをおかなれば、請求することは出来ません。 また、分割弁済においては、遅延した場合の遅延損害金などもきちんと定めておかなければ、請求することは出来ません。 なお、利息・損害金については、利息制限法により、上限が定められていますので、これを超えて定めても違法となります。 違約金には、利息制限法の適用はありませんが、あまりに高額ですと公序良俗違反などになりますので、ご注意下さい。 また、売掛金の場合、消費者契約法に定める年14.6%などが適用されるケースもあります。 ご不明な場合は、ご相談下さい。 |
債務弁済契約公正証書の作成に関する必要書類
債務弁済契約公正証書の作成において必要となる書類は、以下のとおりです。
・当事者双方の印鑑証明書
・債権債務の存否を疎明する資料、または内容が記された書面