公正証書作成時の注意点

公正証書を作成する上で、注意点がいくつかあります。
・金銭債権
・離婚協議書
・遺言公正証書
の3つの場合について、以下に主要な注意点を列挙します。

 

金銭債権に関する注意点

強制執行認諾条項
  金銭債務の履行を定めた場合、せっかく公正証書にするのですから、強制執行認諾条項は入れておくべきです。
そうでないと、不履行となった場合、せっかく作った公正証書であっても、その最大の効力である強制執行を行うことが出来ません。
債権の特定
  債務弁済契約や準消費貸借契約においては、何時どこでどのように発生した債権で、現時点での債務はいくらなのか、ということを具体的に特定しなければなりません。
期限の利益の喪失条項
  分割弁済となる契約においては、必ず「期限の利益喪失」条項を付しておいた方が無難です。
そうでないと、支払が滞った場合、現に不履行となった分以外の残債務を請求することが出来なくなってしまいます。
利息・損害金の有無や内容の定め
  民法上、私人間での貸し借りは、原則として無利息です。
定めをおかなれば、請求することは出来ません。
また、分割弁済においては、遅延した場合の遅延損害金などもきちんと定めておかなければ、請求することは出来ません。
なお、利息・損害金については、利息制限法により、上限が定められていますので、これを超えて定めても違法となります。
違約金には、利息制限法の適用はありませんが、あまりに高額ですと公序良俗違反などになりますので、ご注意下さい。
また、売掛金の場合、消費者契約法に定める年14.6%などが適用されるケースもあります。
ご不明な場合は、ご相談下さい。

 

離婚給付契約公正証書に関する注意点

科目の内訳
  慰謝料、財産分与、養育費、はそれぞれ科目を分けて算定することをお勧めします。
特に、養育費と慰謝料・財産分与は、別個の法律行為であり、時効の有無や強制執行しうる範囲なども異なります。
養育費には、時効はありません。
また、養育費には、不履行時の強制執行につき、特例があり、給与所得等の定期収入の2分の1まで差し押さえることが出来ます。財産分与については、預貯金と現金、など、同等額で相殺をすることが出来ます。
しかし、慰謝料は、財産分与とは異なり、相手から一方的に相殺をされることのない債権です。
あとあとで面倒にならないよう、慰謝料・財産分与・養育費については、出来る限り、個別に金額を明示しておく方が安心です。
金銭以外の現物給付
  不動産など、金銭以外の現物での給付については、所有権移転登記手続きの履行期限などを明確に定めておくことが大切です。
そうしないと、期限の定めがない債務となり、万が一不履行となった場合など、手続きが面倒になります。
また、登録免許税などの費用負担を誰がするか、なども明確に定めておくことが大切です。
財産分与の範囲
  財産分与によって取得した財産には、原則として贈与税はかかりません。
しかしながら、社会通念上の許容範囲を大きく超えるような財産分与が為された場合には、贈与税が課せられる場合があります。
また、不動産を取得した場合には、譲渡所得税が課せられる場合があります。

 

公正証書遺言に関する注意点

遺留分
  相続財産のうち、相続人に保障された一定割合の部分(遺留分)を侵害していれば、あとで減殺請求を受ける可能性はあります。
出来れば、遺留分を侵害しない方がいいのでしょうが、事情がある場合は、減殺請求を受けることも計算した上で遺言された方がいいです。
秘密保持
  公正証書遺言においては、証人2名を立てなければなりません。
相続人や受遺者及びその配偶者など利害関係のある人は証人になれません
そうすると、証人2名と公証人、の最低でも3名には内容が知られます。
万が一、遺言内容が相続人に知られてしまったら、トラブルの原因になりかねません。
そのため、公正証書遺言においては、自筆証書遺言と異なり、遺言の秘密保持が重要となります。
よって、証人となる者については、法律で守秘義務が課せられている法律家である、
・弁護士
・司法書士
・行政書士
などに依頼するのが一番安心です。
遺言執行者の定め
  遺言執行者を定めるかどうかは任意ですが、遺言執行者を定めておいた方が安心です。
遺言執行者とは、遺言にの代わりに相続の手続きを行う者のことをいいます。
相続手続きは、不動産の登記や預貯金の解約・払い戻し、など複雑で煩雑な手続きがたくさんあります。
遺言執行者が指定されている場合、相続人は財産の処分やその他の遺言執行の妨害となる行為をすることが出来なくなります。
遺言執行者は、遺言書でのみ指定することが出来ます。
なお、認知や相続の排除・取消しにおいては、必ず遺言執行者が必要です。
遺言執行者が選任されていない場合、相続人の誰かが代表者となって手続きを進めることになりますが、煩雑な手続きの負担を強いることになり、また、他の相続人からごまかされているような疑念を受ける可能性もあります。
弁護士や行政書士などの専門家に就任してもらうのがいいと思います。
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