退職

退職願を出したが、「預かっておくから、その間に考え直してくれ。」「今は忙しい時期だし、辞めてもらっては困る。」などと言って、受け取ってくれない。ノラリクラリとかわされて、いまだに辞められない。なんとしても退職願を受け取ってもらいたい。もう次の職場が決まっている。

社内にてパワーハラスメント(上司による嫌がらせ)が横行していて職場環境が最悪。歴代の退職者たちは退職願を受け取ってもらえないまま逃げるようにして辞めていった。自分も退職したいが、きちんと退職という形で辞めたい。 等々

 

労務契約に関る法律

労働基準法という法律がありますが、事業主から労働契約を解約する規定(法20条)しか定められておらず、労働者からの解約(退職)については何も定められていません。したがって、労働者からの解約を考える場合、民法という法律の適用を考えることになります(ただし、就業規則等の関係もあります)。

効力関係

  
法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約 (※左の方が効力が強い)

 ※いくら就業規則等に記載されていても、法令に抵触する場合には、その部分は無効となります。

 

<民法の規定>

期間の定めのない労働契約

日給制・日給月給制・時給制など(民法627条1項)
 「期間の定めのない労働契約(雇用契約)については、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができ、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。」と規定されています。
日給月給制とは、月給制ではあるが、欠勤や遅刻などの不就労があったときにその分だけ賃金を差し引くものです。

完全月給制(民法627条2項)
 「期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。」と規定されています。この規定は、完全月給制(欠勤しても賃金がカットされない、など)の場合に適用される規定で、月の前半に解約を申し入れなければ、その月には退職できず、月の後半に申し入れると翌月の末日に退職の効果が生じるということです。

俸制など(民法627条3項)
 「6カ月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項(2項)の解約の申入れは3カ月前にしなければならない。」と規定されています。ようするに、年俸で労働契約を締結している人が退職する場合は、退職予定月の3カ月前までに退職の申入れをしなければならない、ということになります。 

注意
・上記の予告期間を無視して、一方的に労働契約を解約した場合、相手方に何らかの損害が生じたときは、その賠償を請求される可能性があります。
・民法で定める上記の期間を経過しない場合でも、使用者側が退職願を受理するなどして退職を認めた場合には、退職は可能です。

期間の定めのある労働契約(有期契約)

・労働契約に期間の定めがある場合は、原則として、その期間の途中で退職することはできません。ただし、やむを得ない事由があるときは、ただちに労働契約の解除(解約)をすることが認められていますが、その事由が労働者の過失によって生じた場合は、使用者から損害賠償を請求される可能性があります(民法628条)。「やむを得ない事由」かどうかは、様々な事情を総合的に判断することになりますが、回復に長期間を要する病気、パートタイム労働者で配偶者が遠方に転勤することになった場合などは、「やむを得ない事由」の典型例と言えます。
・期間の定めのある場合で、かつ、やむを得ない事由がないときであっても、使用者側が退職を認めた場合は、期間中であっても、退職できます。

 

条文

 

(期間の定めのある雇用の解除)
第626条 雇用の期間が5年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。ただし、この期間は、商工業の見習を目的とする雇用については、10年とする。
前項の規定により契約の解除をしようとするときは、3箇月前にその予告をしなければならない。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3箇月前にしなければならない。

(やむを得ない事由による雇用の解除)
第628条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

 

 

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