男女問題
養育費
● 養育費とは、未成熟の子どもが社会人として自立するまでに必要となる、すべての費用のことです。
●両親には、未成熟の子どもを養育し、自分(親)と同程度の生活を保障する義務があります。
●養育費は、どちらに親権があるかに関係なく、双方が経済力に応じて分担するものです。子どもを引き取った側は労力・費用を負担することは免れませんし、引き取らなかった方は少なくても費用を負担すべきです。
●養育費請求権は、本来は子どもが親に対して持つ権利です。
●養育費の金額・支払方法に関しては、法律に具体的な定めがありません。ですから、離婚する夫婦の自由であると言えます。ただし、金額を決めるときは、「子どもが親と同程度の生活がおくれるように」との基準を頭に置いておくべきです。
●養育費の金額・支払方法は、まず父母の話し合いで決めます。話し合いの調整がつかない場合は、裁判所での調停・審判の方法があります。
●子ども一人あたり月3~5万が一般的です。
●養育費の取り決め(必須事項)・・・離婚協議書(契約書)、公正証書にして残しておくのが賢明です。
①子ども一人あたりいくら支払うか
②支払い(送金)の方法
③子どもがいくつ(何歳)になるまで支払うか
④子どもが病気になった場合の負担、入学金の負担などの取り決め
●「子の養育費は以後一切請求しない」という請求権放棄の合意を離婚協議書に記載しても、不適法な合意とされ、一般的には効力はないとされます。たとえ記載があっても、扶養請求権の処分は禁止されています(民法881条)ので、子は別居した親に扶養を請求することができます。
(扶養請求権の処分の禁止)
民法第881条 扶養を受ける権利は、処分をすることができない。
●養育費には「事情変更の原則」(民法880条)が適用され、協議や審判があった後、事情に変更が生じたときは、変更・取消が可能です(家庭裁判所)。
(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)
民法第880条 扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。
慰謝料
●慰謝料とは、相手方の不法行為によって被った精神的苦痛を慰謝するための損害賠償のことです。
●離婚に際して、「慰謝料は当然払ってもらえる」と考えている人がいるかもしれませんが、慰謝料というのは、それ相当の原因があって初めて出てくるものです。
●「性格の不一致」や「価値観の相違」など、どちらにも責任があると考えられる場合は、原則として、お互いに慰謝料の請求はできません。
●離婚の慰謝料(2種類)
①婚姻関係を破綻させた責任を負う側が、他方の精神的苦痛を慰謝するために支払う慰謝料・・・一般的イメージの慰謝料(離婚)
②婚姻関係を破綻させるに至らしめた個々の事件から発生する慰謝料・・・暴行、傷害、侮辱、名誉毀損など
●浮気・不倫相手(愛人)への慰謝料(2種類)
①離婚にまで至らなかったとしても、個々の不貞行為の事実に対する慰謝料
②不貞行為のために婚姻関係が破綻し、離婚までに至らしめた責任を問題にする慰謝料
●慰謝料請求ができる期間(消滅時効)・・・損害及び加害者を知った時から3年
財産分与
●財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際に、又は離婚後に分けることです。
●財産分与の法律的な性質
・清算的財産分与(夫婦が婚姻中に築いた共同財産の清算)・・・財産分与の中心になります。
・扶養的財産分与(離婚後の弱者に対する扶養)・・・離婚によって生活ができなくなる夫婦の一方の暮らしを維持するための財産分与です。経済的に弱い立場にある配偶者が自立をするまでの援助として支払います。
・慰謝料的財産分与(離婚による慰謝料)・・・離婚による慰謝料を含めた場合の財産分与です。財産分与に慰謝料が含まれて、精神的な苦痛に対して「十分に慰謝されている」場合、配偶者の不貞行為などを理由として、別に慰謝料を請求することはできません。「慰謝するには足りない」場合には、別に慰謝料を請求することができます。
・ 過去の婚姻費用の清算・・・婚姻費用とは、財産、収入、社会的地位などに相応した夫婦共同の生活を維持するために必要な生活費のことです(衣食住の費用、医療費、養育費、教育費、交際費などを含みます)。同居、別居を問わず、夫婦は婚姻中は婚姻費用を分担しなければなりません。多くは婚姻中に「婚姻費用分担請求」という形で処理されます。例えば、離婚が成立するまでに夫婦が別居をしていた場合でも、その間に要した生活費は婚姻費用として認められます。ですから、別居期間中などの過去の婚姻費用については相手方に請求することができ、その婚姻費用を財産分与の中に含めて調整することもできるのです。
(婚姻費用の分担)
民法第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
●婚姻中であれば、配偶者及び子どもに対して扶養義務があります(離婚成立まで継続します)。離婚をすると、配偶者に対する扶養義務が無くなりますが、子どもに対する扶養義務(養育費)は残ります。
●離婚原因をつくった側(有責配偶者)からも財産分与の請求ができます。
●財産分与の割合は、財産の取得や維持に対する夫婦双方の貢献(寄与)の度合いにより決まります。例えば、夫婦が共働きで、双方の給料にそれほど差が無いような場合は、貢献度(寄与度)は半々とされます。また、専業主婦の場合は、家事労働が財産の形成に貢献した度合いに応じて、財産分与が認められることになります(以前は2~3割が貢献度とされていましたが、現在では5割とされることも多くなってきています)。
●財産分与の金額・支払方法などは、夫婦の話し合いで決めます。話し合いがまとまらない場合は、裁判所での調停・審判の方法があります。
●財産分与の対象になる財産(共有財産、実質的共有財産)
①夫婦が婚姻中に協力して取得した財産・・・名義にかかわらず
②住宅ローンなど、夫婦が共同生活のために負担したマイナスの財産(債務)・・・名義にかかわらず
・特有財産・・・婚姻前(結婚前)から各自が所有していたもの。婚姻中に一方が相続したり、贈与を受けたもの。各自の装身具など、社会通念上各自の専用品と見られるもの。財産分与の対象にはなりません。
・共有財産・・・夫婦の合意で共有とし、共有名義で取得した財産。共同生活に必要な家財・家具など。財産分与の対象となります。
・実質的共有財産・・・婚姻中に夫婦が協力して取得した財産で、夫婦の一方の名義になっているもの。財産分与の対象となります。
●財産分与の対象となる財産は、現金・預貯金・不動産(土地・建物)・車・有価証券・ゴルフ会員権・債権・保険金などはもちろんですが、退職金や年金も対象になります。
●財産分与請求ができる期間(除斥期間)・・・離婚の時から2年
●離婚に伴う問題としては他に、親権や監護権、面接交渉権があります。
その他、活用例
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