不安の抗弁権

 

取り込み詐欺への対策として規定する

契約を結ぶにあたって、金銭を支払ってもらう側(売主)は、常に相手側(買主)が本当に金銭を支払うことができるかをチェックしなければなりません。いわゆる、信用状態のチェックや与信調査のことです。この点については、契約を結ぶ前の段階で買主等の信用状態が悪い場合は、契約を結ばなければいいだけの話ですから、特に問題にはなりません。ところが、契約を結んだ後の段階で買主の信用状態が急激に悪化した場合は、これに対する対応が問題となります。

また、継続的な取引の途中に、取引の拡大称して突然大量の注文が舞い込んでくる場合も問題となります。このような場合、買主の代金の支払い(後払いの場合)に関する与信の調査をするような時間的な余裕がないときは、売主は手が打てません。例えば、これまで1回の取引金額が100万円前後だったのに、突然億単位の発注があった場合などがあります。これは、いわゆる、「取り込み詐欺」の手口です。

どんな金額だろうとも、買主が注文してきている以上は応じなくてはならない、ということであれば、売主は極めて不利な立場に立たされます。このような場合、不安を抱いた当事者(売主)が、不安の抗弁権を行使することになります。

 

不安の抗弁権によって契約の履行を拒絶できる

不安の抗弁権とは、具体的には、相手の信用状態などが不安な状況になった場合、先に履行しなくてはならない債務の履行を拒絶(抗弁)することができる権利とされています。例えば、後払いの売買契約の場合では、売主は、商品の引渡しを拒絶することができます。また、信用状態の改善のため、物的担保の提供や、保証人の提供を求めたりすることもできます。さらに、これらの信用状態の改善に応じなければ、契約そのものも解除できる、ともいわれています。

ただし、この権利は判例でしか認められていない権利です。このため、一歩間違えれば債務不履行となる可能性もあります。ですから、権利として契約書に規定する場合や、実際に権利を行使する場合には、不安の抗弁によって債務不履行とならないように、細心の注意が必要です。

なお、現実問題として、不審な発注には、個別の与信調査をおこないます。その調査の結果、信用できないような相手であれば、受注しないようにします。結局のところ、受注する前の慎重な調査こそが、最もリスクを軽減する対策であるといえます。ですから、不審な発注を拒否できるようにするためにも、受発注の手続きを契約書に明記しておく必要があります。

当事務所では、不安の抗弁権の特約についてのご相談を承っております。
お気軽にお問い合わせください。 

Copyright© 2010 All Rights Reserved.