損害賠償責任

 

わざわざ損害賠償額を契約書に規定するメリット

契約上のの損害賠償については、民法第416条に規定されています。ですから、仮に契約の不履行があった場合、契約書に損害賠償の規定が記載されていなかったとしても、契約の不履行について損賠の償を請求すること自体はできます。ただ、この民法第416条は任意規定ですから、当事者の合意によって特約を定めることができます。また、わざわざ特約を規定するには、それなりの理由があります。

契約上の損害賠償についての代表的な特約としては、損害賠償額の予定(民法第420条)という特約があります。これは、あらかじめ当事者間の合意によって損害賠償額を定めておき、後日損害が発生した場合に、その損害賠償額を支払うことによって損害を賠償する特約です。この特約には、実際に紛争が起こってしまった場合、あらかじめ計算しておいた損害賠償額にもとづいて、迅速に損害賠償の請求ができるというメリットがあります。

また、この損害賠償額は、訴訟になった場合であっても、裁判所によって増減されることはありません(民法第420条)。ですから、損害賠償額を想定することができるというメリットもあります。もっとも、相手側に賠償金の支払能力が無ければ、実際にその損害賠償額での損害賠償を見込むことができませんので、注意が必要です。

さらに、判例によると、損害の有無多少を問わず予定の賠償額を請求しうる、ということになっています。つまり、実際の損害よりも多くの損害賠償の請求も可能となるというメリットもあります。ただし、あまりに高額な損害賠償額は、民法第90条によって、無効となる可能性があります。また、あらかじめ決めておいた損害賠償額よりも実際の損害額のほうが多かった場合、実際の損害よりも少ない損害賠償額しか請求できなくなるリスクもあります。

 

損害賠償額を裁判で決めるとデメリットがある

これに対して、損害賠償の特約を定めていない場合、最終的には、裁判によって損害賠償請額を確定することになります。この場合は、損害賠償額の特約を規定している契約と違って、実際の損害の額にもとづいた損害賠償の請求が可能であるというメリットがあります。

ただし、損害賠償額の算定は請求する側が行うことになります。つまり、場合(売買契約など)によっては、損害賠償額の算定の根拠として、利益率などを訴訟を通して公開しなくてはならなくなります。このため、、競合他社(ライバル企業)に企業秘密を公開せざるを得ない、というデメリットがあります。
(一部、裁判所法で保護される場合もあります。)

また、当然、訴訟には様々な(時間的・経済的など)コストかかります。そういう意味では、訴訟経済的なデメリットもあります。ですから、損害賠償額を算定しにくい契約(秘密保持契約など)ほど、損害賠償をあらかじめ定めた特約を規定しておくべきです。

当事務所では、損害賠償の特約についてのご相談を承っております。
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