危険負担

 

民法上の危険負担の規定は実体に合っていない

危険負担は、例えば、建物の売買契約で、契約の成立後、双方の責任が及ばない原因(落雷や地震など)によってその建物が滅失してしまった場合に問題となります。このような場合では、売主と買主のどちらがその損害を負担するのかが問題となります。

上記の例の場合、民法では、買主(建物の引渡しを請求できる債権者)は、建物の滅失についての損害を負担しなければならないとされています(民法第534条)。つまり、建物が滅失してしまっていたとしても、その代金を支払わなければなりません。これに対して、売主(建物の引渡しをしなければならない債務者)は、建物の滅失について損害を負担する必要はありません。つまり、損害の建物の引渡しする必要がないうえに、代金の請求をすることができます。

上記の例における建物のように、特定の物(「特定物」といいます)や、不特定の物(「不特定物」といいます)が特定された後の者の引渡しを求める契約の場合は、民法第534条によって、特定物の引渡しを求めることができる債権者(買主等)が、その危険を負担します。この他にも、民法第535条、同第536条には、危険負担について規定されています。ただ、これらの民法上の規定は、あまりにも債権者(買主等)にとっての負担が大きいため、実際の契約実務の現場では、この債権者の負担を是正するために、契約書によって危険負担の特約を規定することが多いです。

 

買主にとっては遅く・売主にとっては早く

危険負担の特約は、売買契約を締結する際には、必ずといっていいほど検討する必要があります。特に重要になってくるのは、どの時点で売主から買主へ危険負担が移転するのかという点です。この点については、民法上、明確には規定されていません。また、判例や判例でも、明確ではありません。だからこそ、危険負担の移転の時期を契約書に明記しておく必要があります。

この時期については、例えば、契約が成立した時点、登記や登録が完了した時点、物の引渡しがあった時点、検査が終わった時点、支払いが完済した時点などの様々な時点が考えられます。買主にとっては、危険負担の移転の時期が遅い方が有利です。というのも、危険負担の移転の時期が遅ければ遅いほど、危険を負担するべき時間が短くなるからです。同様に、売主にとっては、危険負担の移転の時期が早いほうが有利です。

このように、危険負担の移転の時期については、双方の利害が完全に対立することになります。ですから、実務上は、公平な内容とすることが多いです。すなわち、取引の目的物が、どちらの支配下にあるかによって、危険負担を決定します。具体的には、目的物の引渡しが合った時点(納品の時点)とします。こうすることによって、目的物に支配を及ぼしている当事者がその危険を負担することになります。

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