契約解除

 

なぜ契約書で契約解除の特約を規定する?

民法には、契約の解除lの規定があります。具体的には、第541条~第543条です。このように、法律に規定されている解除権を、「法定解除権」といいます。これに対して、第540条第1項に規定されているような、契約で規定する解除権を、「約定解除権」といいます。契約解除の特約は、この約定解除権を定める特約です。

なぜわざわざ契約解除の特約を規定するのかというと、契約は、約定解除権を契約書で規定していない限り、法定解除権によってしか解除できないからです。法定解除権による解除は、原則として、債務不履行(履行遅滞・履行不能・不完全履行などの契約違反)があった場合にしかできません。また、必ず事前に債務不履行の事実を相手方に対して通告し、債務を履行するように催告しなければなりません。

約定解除権を規定していない場合は、債務不履行の事実がない場合に契約解除をしたいときであっても、契約を解除することはできません。例えば、相手側に金銭の支払いを請求することができる契約で、支払期日に達するまでに相手側の信用状態が悪化してしまった場合であっても、支払期日が経過するまでは、契約を解除することはできません。このような事態にも対応できるように、わざわざ約定解除権を規定しておきます。

 

緊急事態には無催告解除権で対応する

すでに述べたのように、原則として契約を解除するには、債務を履行するように催告する必要があります。しかし、例外として、契約書に催告を必要としない旨を規定した場合は、催告しなくても契約を解除することができます。このように、催告を必要としない契約解除権を「無催告解除権」といいます。

契約の解除をしなければならない状況は様々ですが、代表的な状況として、悠長に相手側に対して催告などしていられない緊急事態があります。具体的には、相手側について、次のような事態が発生した場合です。

○財産の差押、保全処分、強制執行などを受けた場合
○手形・小切手の不渡りを起こした場合
○会社の清算や、破産・民事再生・会社更生などの申請があった場合

つまり、実際に債務の不履行には至ってはいないものの、明らかに今後の債務の履行に支障を出ている状況です。このような状態では、催告をしている間に相手側の財産がなくなってしまい、債権回収ができなくなってしまう可能性があります。契約についての債権回収は、スピードが命です。このような緊急事態に対応するために、催告などしなくてもいいように、無催告解除権を規定しておきます。逆に、緊急性が低い場合(軽微な契約違反など)については、ある程度の期間を定めた催告をおこなったうえで契約を解除できるように規定します。

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