表現について
曖昧な表現は使わない
契約書に用いる表現は、誰が読んでも一義的に誤解なく理解できる表現でなくてはなりません。つまり、当事者以外の第三者が客観的に見ても、当事者と同じように理解できる表現でなければならない、ということです。より具体的には、裁判になった場合に、裁判官が理解できる必要があります。
契約書は、当事者間の取り決めとはいえ、最終的には、裁判官という第三者にその解釈が委ねられます。そのため、当事者がよくわかっているとしても、第三者(裁判官)が見てもよくわからない契約書は、問題となります。
具体的には、特定の業界の人間にしかわからない業界用語や、一部の地方でしか使われていない方言など、一般的(または法律用語)でない表現は避けるべきです。
というのも、特定の人間にしか通用しない表現は、定義が曖昧で、さまざまな解釈の余地がある場合が多いため、いざトラブルになった場合に、双方の理解に隔たりがあるすることが多いためです。また、このような曖昧な表現を故意に争点として裁判で争うような場合もあります。ですから、業界用語、方言、また、これらに限らず、曖昧な表現は使わずに、一義的な表現を使うべきです。
なお、文章の都合上、どうしても業界用語を使わざるを得ないような場合は、用語の定義を明確に規定しておけば問題ありません(このような条項を定義条項といいます。)。定義条項は、国際取引の契約書では当たり前のように規定されていますし、国内の契約書でも、最近は良く見かけるようになりました。
具体的には、契約書の冒頭(たいていは第2条)に規定されています。
例えば、
第○条(定義)
この契約書において、「○○(業界用語)」とは、・・・・・・をいう。
というように規定します。
なお、定義づけた用語を50音順に並べておくと、すっきりしてわかりやすくなります。
以上のように、契約書には、一義的・客観的な表現を使い、法律用語または定義付けられた用語を使います。
数字は改ざんのおそれがないように
また、手書きの契約書のように、改ざんされる可能性がある場合では、数字は、できる限り漢数字を用います。しかも、改ざん防止のため、「壱、弐、参、拾」のような画数の多い漢字を用います。
(このような漢数字を「大字」といいます。)
特に、金額を記入する欄には、アラビア数字の「1」や漢数字の「一」などは、すぐに記入できてしまいます。そうした数字を少し記入してしまうと、金額や桁がガラリと変わってしまいますから、特に金額の大きい契約では注意します。
もっとも、ワープロ打ちで作成されたような契約書では、すぐに改ざんの箇所がわかってしまいますので、読みやすいアラビア数字を使ってもかまいません。
契約書の表現というのは、非常に高度な技術を要するもので、ちょっとした表現の違いによって、解釈がガラリと変わってきます。ある意味では、この表現の技術が、契約実務のなかでもかなり重要なもののひとつともいえます。ですから、契約書の表現については、相手方が用意したものであっても、自分で用意したものであっても、一度専門家のチェックを受けることをお勧めします。
当事務所でも、契約書のチェックサービスをおこなっています。