裁判になるリスクを抑える

 

ビジネスでは取引契約関係のトラブルが最も多い

訴訟社会と呼ばれているアメリカや他の先進国と比べて、日本では、裁判という制度にあまり馴染みがありません。これには、法制度の歴史的事情や国民感情などがありますが、いずれにせよ、日本では、契約上のトラブルがあったからといって、すぐに訴訟になるようなことは、まずありません。

一方で、企業活動において、今後は紛争が増加する見通しが多数を占めているという統計があります。また、紛争の内容としては、取引契約関係のものが最も多いという統計もあります。
(『会社法務部―「第九次」実態調査の分析報告』より)

このため、企業経営のリスクとしては、相変わらず、契約についてのトラブルは、最優先として考えなければならないものです。より具体的には、不合理なクレームや不当な要求などの裁判にいたる前までのトラブルや、裁判そのものなどの備える必要があります。

 

「勝てる」と思わなせない契約書を用意する

裁判前のものにせよ、裁判そのものにせよ、トラブルというのは、当事者に付け入る隙があるからこそ起こるものです。トラブルを起こす側としてみれば、相手にミスがあった部分を追求することによって、何らかの利益を得ようとします。特に、企業間の取引の場合は、利益や損失が絡まないにも関わらず、トラブルが起こることはあまりありません。この損得の勘定が、ある意味では、トラブルの抑止を検討する際に重要です。

日本では、弁護士や裁判官の数の問題から、裁判の際には、非常に時間的・金銭的コストがかかります。この点も、裁判があまり起こらない原因のひとつです。このため、勝てない見込みの裁判を起こそうという人は、あまりいません。訴訟に勝てなければ、単に費用の負担だけが残ってしまうからです。

ですから、裁判になるリスクを抑えるという意味では、常に隙を見せず、「勝てる」と思わせない企業活動をするべきです。とりわけ、取引契約については、契約書の内容が、「勝てる」と思われてしまわないものにすることが重要です。これは、不合理なクレームや不当な要求などの裁判前のトラブルでもどうようのことです。

ただし、企業間の取引でない場合、つまり、消費者との取引の場合や、一部の企業の場合ように、損得勘定ではなく、感情的な理由にもとづいて不合理なクレームや不当な要求があるときもあります。このような相手には、契約書の記載など、通用しない場合もあります(裁判の場合は話は別ですが。)。ですから、相手をよく見て契約を結ぶことも重要です。また、契約書を使用して契約を結ぶ場合は、必ずお互いに納得がいくように合意を形成したうえで結ぶべきです。

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